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DAW アナログコンソール 違い

アナログは音がいい、といいます。
Waves NLSやSlate Vcc等、コンソールの感覚をエミュレートするプラグインもあります。

これらは必要ではない、という意見も聞きます。
Q.でも、実際コンソールエミュレーションは必要なのか?


A.自分のミックスをカッコよく聞かせたいなら、必須です
別にどうでもいいなら、不要です(笑)


Sl4000e Logo
↑石川県の小さな、でも超ハイエンド機材のそろった"中ノ峠ミュージックラボ"にて   カフェもあるよ!




"コンソールの利点"すなわち"コンソールにあって、DAWにないもの"というのは、大きく分けて3つあります。
①物理的な操作のしやすさ
②高周波歪み/倍音増幅/コンプレッション効果
③チャンネルごとの誤差



については、さすがにどうしようもありません。
設計自体がREC/MIXのためだけに最適化されているので、コンソールのアクセシビリティは極めて良好です。
文字通り、一目見渡すだけですべての状態を把握できます。

また、何十年も同じコンソールでミックスを続けている方々は、目を閉じてでも、それこそ一瞬で両手を目的のノブ・ボタンに手を伸ばせます。(実際に見せてもらったことがあります、YouTubeで見る海外のエンジニア達も迷いがありませんよね)

手を伸ばすだけで全機能にアクセスできるコンソールに、そんなエンジニアが座ったらどうなるか。
マウスを飛ばし、キーボードショートカットを覚えたところで、フィジコンを買ったところで、これは絶対に越えられない壁です。






については、プラグインで再現可能です。
試しで実際にプラグインでコンソールの効果を後付けしてみました。
(海外フォーラムで歪みのモデリングに"Ik was DONE"と定評あるIk-MultimediaのT-RackS5 EQ-PBを使用。)
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マイク生の状態から、2秒でAPI 550B(EQはバイパス)、5秒でApiオフ。9秒でApiオン。
その後15秒でさらにSl 4000Eにインプットし、17でアウト、21秒でイン……



SSLの歪み方は80sのハードロックサウンド、メイデンみたいになってます。
特筆すべきはApiを使っている時。VAN HALENが1stをレコーディングしたのはAPIの24Chコンソール、LA-3AやUrei時代の1176を使っている写真がありますが、
あのハイミッドのジューシーな感じと張り付き感が付与されてます。
初期VAN HALENのギターサウンドの秘密の一つでしょう。


これは横山克氏の語る"テクスチャ"の一つですが、このテクスチャはつけようと思わなければつきません。

1073(もともとはNeveコンソールのマイク/ラインインプットモジュールです)やBlack HLSといった往年のコンソールが未だにもてはやされる理由はここにあります。
インプットを絞れば透き通るように、突っ込めば歪む、でも人間、倍音が多い方が聴覚的にいい音だと感じます。

機能性は近代のコンソールに劣っても、得られる音色、科学的および心理的にいい音が得られるようにチューニングされているのが魅力です。

プラグインもこれを再現できるものはありますが、EQカーブやコンプのかかり方だけしか再現していないものも多いです。
それに、実機であれば必要なコンソールからのセンドレベルやらケーブルの音質変化やら、その辺を吟味することも出来ません。
結局偽物は本物に劣るというのも事実ではあります。



③チャンネルごとの誤差。
DAWとコンソールが違うとしたら、これが一番大きいと考えます。
DAWは全チャンネル、一切同一の処理ができるのに対し、コンソールではこれは絶対に不可能です。
コンソールとはそもそも、1ch分のモジュールを32c分hだか64ch分だかずらーっと並べて一台のコンソールとしています。
これらは抵抗とコンデンサ、トランジスタやオペアンプ……いろいろなものから出来ているわけですが、この電子パーツ類は
技術的に"同じ値のもの"が作れないのです。
ギターのエフェクター自作なんかを経験されてる方には言うほどの話でもありませんが、パーツの示す値に1~5%くらいのずれは
あたりまえ、というか回避不能です。
1.0051kオームの抵抗も、0.995オームの抵抗も、同じ1kオームの抵抗として売られています。(……あってる?)

たかがその程度と思われるかもしれませんが、マイクプリアンプ部なんかではものすごいレヴェルの増幅をします。
それが1Ch分のモジュール全体に何百個、何千個とあつまり、それが五十本、六十本と並んでいれば、耳に感じるほどの差異が出てもおかしくないのでは?
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↑4秒ごとにDAWから、コンソールからを切り替えています…が。
チープなスピーカーではまず聞き取れません。
音を聞くのではなく、位相感、位置の感覚を聞いてください。

生ファイルを上げておくので気になる方は位相可視化プラグインなどで試してみては。
https://drive.google.com/file/d/1MNFrdLCcJLI1CraHU1r-vX8AvqIntNAH/view?usp=sharing






LとRのパン、ボリューム。コンソールはアナログ=連続量ですから、段階がありません。
つまり。ほぼ無限に奥行きがある空間に音を配置できるわけです。
逆にデジタルであるDAWには(極論ですが)段階的にしか配置できません(0と1で記述する都合上、空間を区切りらなければいけない)

twitterでも言いましたが、実機ではボリュームとパンだけでもわりかしミックスとして成り立ちます。(素材がしっかりしていれば)
ステレオ空間のまったく同じ場所には、そもそも音を配置できないのです。
DAWにWAVESのSSLをインサートしたところで、これはまねできませんでした。
すなわち、同じ場所に音を配置しているせいで、濁りが生まれてきやすいということ。
(知る限り、Bx_Consoleを除くあらゆるSSLプラグインはこのChごとの個体差を再現していない、UADも含む)

これをミックス全体に適用すると、こうなります。

↑ネット上で紹介される"奥行を作る方法"であるReverb、Dly類は一切使っていません。
そもそもの素材(ドラムはBFD、ピアノとオルガンはNative Instrumentsですが)とSl 4000コンソールのパンとボリューム、コンプの強さとEQだけでここまで奥行きが出ます。

これは音数が増えるほど顕著に表れてきます。


コンソールプラグインは、テスト程度に使うだけでは分かりやすい効果が得られにくいので、(言っちゃ悪いですが)音にこだわりのないDTMerさんは後回しにしがちです。でもそれによって得られる質感はあこがれのCDのテクスチャ
"PANの高さ"といったステレオイメージにも影響し、それ単体で楽器のごとき音の変化をさせます。
現代J-Rockだと岸田教団さんなんかがこの種の"アナログの歪み・楽器の音"に対するこだわりを感じられるアルバムを出しています。
エンジニアとしてでなく、曲を作るミュージシャンがミックスするなら、自分の音をいい音、カッコイイ音として聞いてもらいたいと思うのは当たり前では?
を通すだけで"楽器の音をよく"してくれるのがコンソールであり、コンソールエミュレートです。
もっと積極的に音作りを考えるべきでは?

この辺のことは、アシスタントから経験を積んだようなエンジニアさんにとっては周知の事実です。
しかし、音楽業界に入った時からDAWがあるような世代のエンジニアさんは普通に知らなかったりします。


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特にロック・メタル系ギタリスト兼DTMerな方は、それこそアンシミュの次くらいに導入すべきです。
古今、歪んだギターの"名盤"でコンソールやそのプリアンプが通されていないギターサウンドは皆無です。
Youtubeで海外のギタリストのプライベートスタジオをのぞいてみて下さい。
ある程度のビッグネームなら、ほぼ間違いなくギター用のマイクプリ(ガチな人はオープンリールレコーダーまで)を導入してます。
マイク録りでもアンシミュでも、ギターサウンドがいい音にならない方はまず試すべきです。
ギターサウンドにとって、マイクプリの音はそれほどに重要です。

日本のメジャーのCDの音は、十中六七くらいの確率でSSLが通されています。
海外のメジャーなバンドのギターは、十中七八くらいの確率でApiが通されています。
海外のStudioのApi Lunchboxの導入率は半端じゃありません、ほぼ100%です。


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優先順位としては、ドラムなどの音源系の次、リバーブ等空間系エフェクトを買い足す前に……といった感じでしょうか。
自分のミックスをカッコよく聞かせたいなら、ね。
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プロフィール

Matsuda

Author:Matsuda
1999年生。

弾ける楽器
バイオリン("元"中部地区1位)・ピアノ/キーボード
ギター・ベース・ドラム

MI Japanに2年、USA Boston留学を経てレコーディング・ミックス・ポストプロダクション等まんべんなく。


ジャンル…いろいろ。jazzからDjentまで。
好きなアーティスト…MAGNETICO/岸田教団/Larry Carlton/Gregole Hillden

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